嘘から始まる運命の恋
「俺は真由里とは遊びのつもりだったんだ。たしかに体の相性はいいけど、それだけだ。体だけの関係にもいい加減飽きてきて、後腐れなく別れたかったんだよ。だから、兄貴にしおらしい嘘までついて頼んだんだ。けど、俺と別れるよう説得してくれって頼んだのに、こいつ、ぜんぜん俺のこと諦めてないじゃないかよ」

 圭がぐっと拳を握った。

「黙れ。そんな言い方はないだろう。真由里さんが傷つく」
「そんなわけあるかよ。真由里は誰とでもすぐに寝る軽い女なんだ。俺に振られたくらいで傷ついたりしねーよ」
「快!」

 大きな声で言って、圭が病室につかつかと入ってきた。

 今までのふたりのやりとりからだいたいの話が掴めた。

 なんだ、同じだったんだ。真由里の本当の恋人は双子の弟の快の方。私も圭も、結局妹や弟に振り回されていたんだ……。

 それに気づいて、私の体が震え始める。それをどうしても止められなくて、私は黙ったまま圭の横をすり抜けて、病室を飛び出した。

 早足で廊下を歩き、階段を駆け下りた。受付の横を歩いて通り過ぎ、自動ドアから出たところで、耐えきれなくなってしゃがみ込んだ。邪魔にならないように、傘立ての陰で膝を抱える。自動ドアが開く音がして、出てきた誰かが私の横で立ち止まった。
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