キスは目覚めの5秒後に
中華食堂でおなじみの朱色の丸いテーブルを囲んでいるのは、エレンとブラウン髪のアニタと金髪のレベッカ、それに私。
みんな上品なビジネススーツを着ていて、私だけセーターにジーンズ。
他から見たらどんなグループに見えるのだろうか。
「恋人じゃないけど一緒に住んでるわ。出会ったのは、オフィス下のレストランよ。ちなみに、彼はとってもイジワル!」
みんなの問いに対して一度に答えると、場が一気に湧き立った。
「わお、本当!?ここで初対面なの!?」
「恋人みたいに仲が良く見えるわよ!」
「イジワルだなんて、そんな風に見えないわ。愛を感じるわよ!」
「やだあ、愛なんて、そんなことないわよ」
否定すると、ミヤコこそ勘違いしてるわよー!と一斉に返ってきた。
橘さんの評価が高い。
みんなの中で彼は、私を助けてくれたスーパーヒーローなんだろうと思える。
事実、橘さんはヒーローで、私もすっごく感謝している。
こんな異国の地で窮地を救ってくれた人。
普通なら、すぐに好きになっているかもしれない。
でもそれはありえないことだ。
昨夜のことを思い出すと、未だにむかっとするんだもの。
『5秒で考えろ』
ほんっとにイジワルなんだから。
運ばれてきた料理を食べながら、異国版女子トークに花が咲く。
「この前デートした男はキスが下手だったわ。もう二度と会わないつもりよ」
やっぱり、キスの相性って基本よね。なんてサラッと言ったり。
「彼のベッドテクニックは最高だったわ」
過去の男のことが忘れられないって言ったり。