キスは目覚めの5秒後に

中華食堂でおなじみの朱色の丸いテーブルを囲んでいるのは、エレンとブラウン髪のアニタと金髪のレベッカ、それに私。

みんな上品なビジネススーツを着ていて、私だけセーターにジーンズ。

他から見たらどんなグループに見えるのだろうか。


「恋人じゃないけど一緒に住んでるわ。出会ったのは、オフィス下のレストランよ。ちなみに、彼はとってもイジワル!」


みんなの問いに対して一度に答えると、場が一気に湧き立った。


「わお、本当!?ここで初対面なの!?」

「恋人みたいに仲が良く見えるわよ!」

「イジワルだなんて、そんな風に見えないわ。愛を感じるわよ!」

「やだあ、愛なんて、そんなことないわよ」


否定すると、ミヤコこそ勘違いしてるわよー!と一斉に返ってきた。


橘さんの評価が高い。

みんなの中で彼は、私を助けてくれたスーパーヒーローなんだろうと思える。

事実、橘さんはヒーローで、私もすっごく感謝している。

こんな異国の地で窮地を救ってくれた人。

普通なら、すぐに好きになっているかもしれない。


でもそれはありえないことだ。

昨夜のことを思い出すと、未だにむかっとするんだもの。


『5秒で考えろ』


ほんっとにイジワルなんだから。


運ばれてきた料理を食べながら、異国版女子トークに花が咲く。


「この前デートした男はキスが下手だったわ。もう二度と会わないつもりよ」


やっぱり、キスの相性って基本よね。なんてサラッと言ったり。


「彼のベッドテクニックは最高だったわ」


過去の男のことが忘れられないって言ったり。

< 28 / 75 >

この作品をシェア

pagetop