キスは目覚めの5秒後に

久々に使うけれど発音は鈍ってないようでホッとする。

六年前の記憶を頼りにするからガイド雑誌も持ち歩かないし、これなら平日に出歩いてても現地在住と思われてなめられない筈だ。

彼女オススメのランチカフェの場所を聞いてホテルを出ると、外の気温はとても低くて街路樹は紅葉が進んでいた。

赤色の混じった黄色い葉が、青い空によく映える。


夏もいいけれど、ストックホルムの秋はとても美しい。

この街はバルト海とメーラレン湖に囲まれた数個の島で出来ていて、水の都とも言われている。

北欧の短い秋、旧市街地のガムラスタンとか公園とか景色のいい場所は数あれど、特に私は北方民族博物館のある島がお気に入りだ。

綺麗な水とお城みたいな外観の博物館と紅葉の木々がまるで絵画のようで、素敵過ぎて訪れるたびにため息が出る。

ついでにいえば雪景色も素晴らしい。

留学中は何度も通ったものだ。そうだ、明日にでも行こう。

予定を決めてない気ままな旅だ、時間はたっぷりある。


先ずは、中央駅から20分ほど地下鉄に乗ったヴァールベリの駅にある蚤の市に向かう。

ここは駅直結のビルの地下にあって、毎日蚤の市が開催されているのだ。

入場料を支払って奥へと進んでいくと、大好きなアンティーク雑貨の世界が広がっている。

スウェーデン人は物を大切にする人が多いから、未使用でなくても状態のいいものが多いのが嬉しい。

シャッターで区切られた小さなお店のそこかしこに北欧雑貨が置いてあって、もうそれだけでわくわくと心が躍って脚が軽くなる。

係長の眉間のしわに負けずに交渉して来て、本当に良かった!

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