キスは目覚めの5秒後に
プレートやカップを吟味してオブジェも見てまわる。
いいものがありすぎて、みんな欲しくなって困ってしまう。
中でも品揃え豊富に出店していたダンディな紳士と雑貨話が弾んでしまい、勧められた可愛い絵本を二冊も購入してしまった。
だってムーミンの絵本なんだもの、これは買わずにいられないではないか!
ダンディ紳士にサヨナラをして、蚤の市から出て通りを眺める。
さっきの紳士もだけれど、ストックホルムはイケメンが滅茶苦茶多い。
メイン通りを100メートルも歩けば、好みのタイプに会えるのではないかと思う。
今はスウェーデン人と恋に落ちたいなんて微塵も思わないけれど、彼らを見るだけで目の保養になる。
戦利品のカップとシュガーポットと絵本を手にし、ほくほくと幸せな気持ちで地下鉄に乗った。
「そろそろランチにしようかな」
中央駅まで戻ってレストランにいくと、日本でいうところのお昼休み時間はとうに過ぎているのに、割りと混雑していた。
「んーこれこれ!この味!」
スェーデン風ミートボールに添えられたリンゴベリージャム!
ライ麦パンの素朴な味!
懐かしい味に喜んでいると、スウェーデン語が飛び交う中にちょいちょい日本語が混じっているのに気が付いた。
耳を傾ければ、ソフトな話し方で少し低めな好みど真ん中の声が聞こえてくる。
・・・旅行者かな?
人のことは言えないけれど、今の時期に珍しい。
興味がわいて声の主を探すべく見回すと、テーブル一つ挟んだ向こうの席で、スーツを着た日本人男子が携帯電話で話をしていた。
落ち着いた雰囲気だけれど結構若そうだ。30代前半くらいに見える。