キスは目覚めの5秒後に

その夜。

いつも通りに夕食を終えて後片付けも終わり、今橘さんはバスルームにいる。

彼はいつも夕食後すぐにシャワーを浴びるのだ。

そのすきに、私は日本から持って来ていた玄米茶をいれた。

香ばしい玄米の香りが鼻を通り抜けて、すごく落ち着いた気分になる。

コーヒーやハーブティも好きだけれど、外国にいると日本茶が恋しくなるから不思議だ。

私って、やっぱり日本人なんだな・・・持ってきてよかった。

しかも、大好きな北欧食器のカップで飲むのがまた一味違うように感じる。

あの日蚤の市で買った食器は割れてしまったけれど、そのショックを打ち消してくれるほどに気分がいい。

北欧と和の融合、なんて素敵なんだろう。


「ん~いい感じ。お煎餅もあると、なおいいのに」


たらふく夕食を食べたのに、お菓子は別腹だ。

持ってくればよかったなぁって思いつつ縁側に座るおばあちゃんよろしくしみじみしていると、バスルームの扉が開く音がした。

スリッパの音がだんだんダイニングに近付いてくる。


「あ、橘さん、玄米茶いれたんですけど、飲みますか?」

「玄米茶?持って来たのか」

「はい、美味しいですよ。海外にいると日本の物が恋しくなるから・・・って!」


橘さんのカップを用意して振り向いた私は、彼の姿を見てギョッとして固まってしまった。


「そうだな、ありがとう。いただくよ。ん?どうした?」


口をパクパク開け閉めしてる私を見て、彼はキョトンとした表情だ。


「やだ、どうした?じゃないです!ほとんど裸じゃないですか!女子がいるんですから、気をつけてください!」

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