キスは目覚めの5秒後に
「ん?ウブじゃあるまいし、男の裸くらい何度も見てるだろう。風呂上りの俺はいつもこうだ」
いつもこうって、アナタ・・・それはそうかもしれないけれど、私のことを意識してないんだろうか。
下はバスタオルを巻いただけ、上半身ももちろん裸。
引きしまった腹筋、細いけれど筋肉がある血管の浮き出た腕。
肩からかけたタオルで濡れた髪をゴシゴシする姿が、映画俳優みたいで妙に決まっている。
スポーツとかやってなさそうなのに、細マッチョだ。
見ちゃいけないのにじーっと見てしまう。
お昼の女子トークがパッと蘇って、不覚にも顔が熱くなった。
もしもタオルがハラリと取れたらどうするのだ!
「とにかく、バスローブでも何でも着てください!お茶いれておきますから」
このスタイルで椅子に座られたら超困る。
彼の視線から逃げ出すように椅子に座って、橘さんのカップにお茶を注いでいると、トンとテーブルの上に手が置かれた。
長い指を持つ大きな手がふたつ、私を椅子に閉じ込めるようにテーブルの上に置かれている。
背もたれ越しに橘さんの体温を感じる。
シャンプーのフローラルな香りが鼻を擽る。
「竹下美也子・・・今、男がいないのか?」
頭の上から好みの声が降ってきて、胸がとくんと震える。
それをごまかすように、きっぱりとした話し方を心がけた。
「ひと月前に別れました。それが何か?」
「じゃあ、スウェーデンに来たのは傷心旅行ってやつか?」