キスは目覚めの5秒後に

すごく気分が壊れるけれど、どこの国でもこういうマナーの悪い人たちがいるものだ。

お店が建ち並ぶ通りはたくさんの人が歩いているけれど、人と人がすれ違うのがやっとの細い路地はほとんど人がいない。

その道にある石段を上がって広い通りに出ると、目指すアンティークショップのある通りに辿り着く。

小さなウィンドウの真ん中に、スウェーデンの人気陶芸家リサ・ラーソンさんの大きなライオンがどーんと置いてあるのが見えてきた。

愛らしい顔のその向こうに、食器やオブジェがたくさん置いてあるのが見える。

6年前とちっとも変らない、なんて素晴らしいお店なのだろうか!


「ここに入りたいんですけど・・・」


横にいる橘さんを見上げると、店をチラッと見て無言のままドアを開けた。

開けた状態のまま私を見てるから、急いで先に中に入る。

レディファーストだなんて、こんな風にされたら大切にされてる感じがしてときめいてしまう。

橘さんって、意外に紳士なのかもしれない。


お店に入ると、眼鏡に白い顎髭がトレードマークの優しい紳士が出迎えてくれる。

口ひげがあるせいで歯が見えないけれど、にこーっと笑う顔はすごくチャーミングで人懐っこい感じだ。

まるで、痩せたサンタさんみたい。


「いらっしゃい」

「こんにちはー」


狭い店内の棚のそこかしこに、ビンテージのカップ&ソーサーが無造作に重ねて置いてあったりして、日本の丁寧なディスプレイに慣れてる私としては、この置き方でいいのか!?とハラハラしてしまう。

倒れてしまいそうで心配になるけれど、こちらではこれがスタンダードな感じなのだ。

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