キスは目覚めの5秒後に

このディスプレイは、地震のない国ということも関係してるのかもしれない。

棚の片隅に、初日に買って割れてしまったのと同じカップを見つけて心が跳ね上がる。

ロールストランド社の食器。

グリーン地に赤紫のお花が白い縁どりで浮き立たせてある、とってもレトロなデザイン。

しかも、なんと。ここはソーサーとセットで売られているではないか!

ビンテージでもあまり流通してない物で、超お宝の発見だ。

でも、今の私にはとってもお高いお値段・・・。


「ん~でもやっぱり可愛いなあ」

「なんだ、それ欲しいのか。買おうか?」

「へ?」


隣にいる橘さんが、私の顔を覗きこんでいる。

私の願望が、幻聴を引き起こしたのだろうか。


今、買おうか?と訊きましたか?

買うのか?の聞き間違いですか?


何も言えずにいると、橘さんが私の手の中からカップとソーサーを取り上げた。


「これが欲しいんだろう?顔に書いてある。他にもあるか?この際、なんでも言え」


どうしたのだろう、すごく優しい。

というか、気前がいい。

朝から少し変だと思っていたけれど、もしかして、昨日の夜こと気にしているのだろうか。

お詫びなら、ありがたくお受けしなければ。


「ありがとうございます」


その後もお店の中を隅から隅まで見て回り、結局カップ&ソーサーを1セット購入したのみで出た。

お店の中に1時間近くもいたことになる。

橘さんがちょっとぐったりしていた。


「すみません、付き合ってもらっちゃって」

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