キスは目覚めの5秒後に

夢中で話をしていると、お待たせ~と料理が運ばれてきた。

大きなお皿の中に、サーモンのマリネとマスタードソース、それに小さなジャガイモがゴロゴロと幾つものっている。

カゴにはスライスされたライ麦パンがバターと一緒にこんもりとあって、スープもボウルに入っててすごく飲みごたえがありそうだ。

橘さんの方も似たような盛りだけれど、ジャガイモではなくマッシュポテトになっている。

ボリュームたっぷりのそれを無言で一生懸命食べていると、橘さんが話しかけてきた。


「今の会社ではどんな仕事をしているんだ?」

「雑貨の企画開発です。デザインをして、プレゼンしたりしています。これでも私がデザインして世に出た雑貨がたくさんあるんですよー」

「だが、それだけスウェーデン語ができるんだ。生かした仕事をしてみたいと思わないのか?」

「それは、考えたこともありません。だって、英語と違ってマイナーだから、必要とされている職場は少ないでしょう?」

「今回訳してもらった就業規則を社員たちに見せたら“完璧だ”と褒めていた。経営コンサルタントとしては、あんたをうちの会社にヘッドハンティングしたい」

「ええええっ!?」


あまりの驚きで、飲んでいたスープでむせる。

苦しむ私を見て、橘さんが店員さんにミネラルウォーターを要求した。

店員さんにも大丈夫?料理のせい?と心配されたので、首を振って否定のジェスチャーをした。


「ほら飲め。そんなに驚いたか?俺としては当然の提案なんだが」

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