キスは目覚めの5秒後に

「でも、ホームパーティですよ?気楽なもので、カジュアルスタイルでいいんじゃないんですか?」


いつものジーンズにセーターで構わないと思う。

スウェーデン人はよくホームパーティをする。

リンゴが沢山採れたからリンゴパーティをしようとか、ベリーがあるからジャムパーティをしようとか、そんな理由でよく集まるのだ。

自宅で催される誕生日パーティも普通はカジュアルで、留学中も料理持ち寄り制の和気あいあいなものしか出席したことがない。

今回もそういうものではないのだろうか。


「それが、娘さんの20歳の誕生パーティで、盛大にするそうなんだ。自宅にダンスホールがあるようなデカイ家だぞ。正装での招待だ。諦めろ」

「ダンスホールって、それまたすごいですね。どんなセレブ・・・」


試着ルームで着せ替え人形みたいにとっかえひっかえ着ては橘さんに見せる。

その度に無言のまま首を傾げたり顎に手をやったりするので、似合うのか似合わないかさっぱりわからない。

試着ルームの鏡に映る私は服に着られていて、どうにもちぐはぐだ。

こういう綺麗系の服が似合わないと言うか・・・メイクと髪型のせいかもしれないけれど。

何度も試着を繰り返した末、彼の気に入るスタイルに落ち着いた。

カードで支払いをする橘さん。服にアクセサリーに鞄に靴と、一体いくらの請求なんだろうか。

訊くのがとても怖ろしい。



「橘さん。夕食は私が作ります。何がいいですか?」


帰りのタクシーの中で訊くと、橘さんは日本食が食べたいと言った。


「肉じゃがとか味噌汁が飲みたい。作れるか?」

「はい。どーんと、お任せください!じゃあ、ついでに買い物して行きましょう」


私は、日本食材スーパーの名を運転手に告げた。

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