キスは目覚めの5秒後に
「ミヤコは今夜が最後だろ?タチバナ以外の男の味を試さないか?俺、うまいよ?スウェーデンの男を覚えて帰ってよ。俺も、ミヤコを味わい尽くしたい」
艶を含んだ囁き声を出して、耳に息を吹き掛けてくる。
こうやって、みんなに迫っているのか。
「ここは部屋がいっぱいあるんだ。さあ、ベッドに行こうよ。眺めのいい部屋がいいかい?」
この手なれた感じ。
パーティのたびに、こんな風に誰かを誘っているのかもしれない。
――橘さん、助けて!
そう思うけれど、今彼は誕生日の彼女にデレデレ中だった。
顔を思い出せばむかっとするけど、踊るように仕向けたのは私だ。
目前の敵は自分で何とかするしかない。
「やめて!放さないと人を呼ぶわ!」
「すぐに呼べなくなるよ。なぜなら、俺のキスでうっとりするから」
顎に手が添えられてぐっと上を向かされた。
どうしてルドルフは、こんなに私に固執するのだろう。
もう少し自由に動けたら、股の間を蹴りあげてやるのに!
「やだ、待って」
「ミヤコ、一緒に冒険しよう」
こうなったら入ってきた舌を噛むしかない。
身構えていると、急に体の圧迫感がなくなって、ルドルフの体が離れて視界がぱっと広がった。
「え?」
今、何が起こったのだろうか。
ルドルフが少し離れたところで尻餅をついて顔を歪めていて、それを橘さんが冷ややかに見下ろしている。
「タチバナ。ああこれはつまり、それだけミヤコが魅力的ってことさ。別にいいだろう?」
「ルドルフ、エレンが泣くぞ」
「くそっ、エレンか。参ったな・・・わかったよ」
ルドルフは顔をしかめながら立ち上がって、手をヒラヒラと振って会場に戻っていった。