キスは目覚めの5秒後に
「ったく、隙見せるなと言っただろう。なに襲われてんだ」
「隙ってそんな。私は普通にお手洗いに来ただけです!・・・それより橘さん。どうしてここに?」
「エレンが教えてくれた。会場を出ていく美也子をルドルフが追っていったと。エレンとルドルフは幼馴染みで、彼女は何かと彼を気遣っているらしい。が、ルドルフはエレンの言うことを聞かないから、俺に行ってくれと哀しそうに言うんだ」
「幼馴染み・・・微妙な関係なんですね」
「アイツもいつか、エレンの良さに気づくだろ。帰るぞ」
「え、帰る?でもパーティがまだ終わってないですよ」
「用ができた。行くぞ」
用って?と訊く間もなく手首を掴まれて、ぐいぐい引っ張られて焦る。
挨拶しなくてもいいのだろうか。
会場のそばまで来ると出入り口にエレンが立っていて、私に気づくとパーッと輝くような笑顔になった。
「ミヤコ!よかった。さようなら!」
私と橘さんに手を振る彼女に、私も笑顔で返す。
「エレン、いろいろありがとう!さよなら!」
帰り道のタクシーの中で、橘さんはずっと黙ったままだ。
腕を組んで何かを考えていて、声が掛けられない。
マンションに帰るとすぐ、彼は自室のドアを開けた。
開け放ったままドア部分にもたれて立っていて、私を見つめている。
出会ったときのように唇だけで笑って首を傾げて、どうする?と訊いている感じだ。
違うのは、潤んだ瞳が色っぽいこと――
「入るか?」
ズルイ男。
自分の気持ちを言わないで、私にどうするか選ばせるなんて。
でも、それでも、今夜は彼に抱いてほしいと思った。