お猫様が救世主だった件につきまして
「おまえには馬鹿げたゲームかもしれないが。俺たちは人生がかかっている。もしもおまえが住むニホンがその“馬鹿げた”ゲームで適当にやって負けたために無くなるとしたら、それでも笑って居られるのか?」
「……」
「手段など、所詮は過程にすぎない。戦いに馬鹿げたも面白いもないだろう。それともなにか? おまえは、人びとが命を奪いあう戦いが好みか?」
「ち、違う」
「違う?じゃあ、何が言いたい?
言っておくが、この世界もかつては命を奪いあう戦いはあった。それを嘆かれた神が、命を奪わぬ唯一の手段として定めたのがこのゲーム。
俺は、よかったと思う。誰もが傷つくこともなく、命を奪われることもないこのバトルで。
誰だって喜んで死にたいやつなど居ないからな」
アレクはそい言うと、フッと表情を和らげてフィールドを見上げた。
「血を流さなくて済むなら……その方が良いだろ」
その横顔に、なぜかドキッと小さく心臓が跳ねた。胸の上でギュッと拳を握りしめる。
「……たしかに、あたしのいた世界では……毎日毎日誰かが戦いの為に命を落としてる。とても悲しくて……でも、何にもできないって悔しかった。家でも学校でも大して役に立つこともなかったし」
キュッと唇を噛みしめたあたしは、アレクの視線を感じてうつむいた顔を上げる。
「……あたしで出来ることがあれば……っていつも思ってた。だから」
フッ、とアレクが笑ったのが見えて。ちょっとだけ鼓動が速くなる。
「そうか……おまえも俺と同じだな」って。ポンと肩を軽く叩かれて。
なぜか、彼のぬくもりがいつまでもそこに残ってるような気がした。