お猫様が救世主だった件につきまして
「わかりました……簡易なものですがフィールドをお出ししましょう。皆さんお下がりください」
え、フィールド? どういうことだ、と訊こうとしたけれど。そのまま黙って見ているだけでよかった。百聞は一見にしかずとはよく言ったもの。
アンナさんが何やら祈り始めると、その口から歌うような綺麗な澄んだ声が流れ出す。その歌声に乗って天井と床から円形の光が降りてきて、それがひとつに合わさると。驚くことが起きた。
かなり大きな部屋の中央に現れたのが、二匹の色違いのドラゴン。体の大きさは3メートルくらいで、円形の土俵の上で向かい合ってる。え?相撲?
その土俵は1メートルほど浮かんでいて、ドラゴンのそれぞれの後ろに何やらパネルが見えて……
そして、なにかとても馴染みがある台が……って、え?
何度目を擦ってみても目を瞬いても、やっぱりもぐらたたきだ。
「あれ……もぐらたたきゲーム? なんでこんなとこに!?」
「あれがこの世界の戦いだ。神が定める唯一勝敗を決する手段。勝敗が決まれば何人たりとも異を唱えられぬ絶対の結果となる」
「……は?」
アレクが真剣に話してるみたいだけど……あたしは目が点になる。何のコントだ、これ?
「ど、どこにもぐらたたきゲームで戦争をする世界があるのよ!」
「この世界だ。文句あるか?」
「大いにあるに決まってるでしょう! あんな馬鹿げたゲームですべてを決めるなんて」
「馬鹿げた?」
ピクリ、とアレクの眉が動くと――彼の纏う空気が一気に冷えたと気付いても後の祭り。