恋は死なない。



「もう、心の内だけにとどめることなんてできない。……君が好きだ、……佳音」



「佳音」と名前で呼んでくれるその響きが、佳音の胸に沁みとおって、もうこれ以上自分を偽ることができなくなる。


佳音は胸のところで両手を握りしめたまま、ゆっくりと和寿へと向き直った。そして、和寿の懐に潜りこむように、その裸の胸にそっと自分の額を押し付けた。

佳音の想いを感じ取り、和寿も目を閉じて、深く息を吸い込んだ。

佳音の肩と背中に回された和寿の腕に、いっそう力がこもる。佳音も手にあったタオルを落として、和寿の背中に腕を回し、力を込めた。



――今、このひと時だけ……。この人を愛することを、この人に愛されることを、許してください。



和寿を抱きしめ、和寿から抱きしめられながら、佳音は、幸世にだけでなく自分の中の信念やこの世のすべてのものに対して、許しを求めた。


抱擁が緩められ、再び唇が重ねられる。キスはすぐに次の衝動を呼び起こし、それから――、佳音はもう何も考えられなくなった。
すべてを和寿の手に委ね、大きな渦の中に巻き込まれていく。

いつの間にかベッドの上に横たわり、顔に首筋に胸元に、和寿からのキスの雨を受けていた。
何にも隠されることのない白く滑らかな肌の上を、和寿の手のひらと唇がたどる。愛しい人から愛されない限り、もたらし得ない、佳音にとって初めての感覚。


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