恋は死なない。
「…あ…っ!……古川さん……!」
繰り返される愛撫の波に溺れて、思わず佳音が和寿にしがみついて声を上げる。
すると、和寿は息を荒げながらも、佳音を見つめて言った。
「古川じゃなく、下の名前で。僕に抱かれながら、僕の名前を呼ぶ佳音の声が聞きたい」
そう言われても、そんなふうに呼んだことのない佳音は戸惑ってしまう。
頬を上気させ、大きな目を見開いて、和寿を見上げてつぶやく。
「……和寿さん……?」
「うん」
佳音がただ名前を呼んだだけで、和寿は満ち足りたように微笑んだ。
その笑顔を見て、また佳音の中に想いが溢れてくる。切なさを帯びた佳音の眼差しに見つめられ、和寿のそれも切なくなり、お互いの指を絡めながらキスが繰り返される。
真綿で包まれるような和寿の愛撫がだんだんと力強くなり、佳音の想いも体もますます熱くなって来たとき、鋭い感覚が佳音を貫いた。
「……!!あ……っ!」
思わず体も表情もこわばらせて、佳音は悲鳴のような声を上げた。
佳音のこの反応に、和寿は心配そうに眉根を寄せて、枕に頭を預ける佳音を見下ろして見つめた。
「……佳音?もしかして、初めて?」
佳音は痛みで涙のにじむ目で和寿を見上げ、かすかにうなずいて、その問いに答えた。