恋は死なない。
そして、ふと工房の中へと視線を移す。
暗い工房の真ん中に、窓から射し込んだ月の光に照らされて浮かび上がってきたもの――。
それは、佳音が丹精込めて作り上げた幸世のウェディングドレスだった。
そのものから光がこぼれ出ているかのように、キラキラと光り輝いている。その無垢で純粋な美しさに、佳音は息をするのも忘れた。
魂を抜かれたように、マネキンに着せられたドレスの前に立ちすくみ、そこから視線を動かせなかった。
このドレスは何も語りはしなかったが、すべてを見透かされているような感覚になって、次第に体が震えてくる。
自分の罪深さを自覚して、佳音の目に涙が溢れてくる。佳音は力なくそこへ座り込み、頭を抱えた。
自分は、このウェディングドレスを着る花嫁の伴侶となるべき人と、越えてはならない一線を越えてしまった。いくら愛し合っていたとはいえ、絶対に犯してはいけない過ちを、犯してしまった。
ウェディングドレスを作ることは、佳音にとって、この世に存在できるためのたった一つの意義のようなものだ。それを否定するような行為を犯しては、もう佳音は生きていけなくなる。
そして――、和寿も。
たった今二人で確認し合った愛を貫こうものなら、生きるのでさえ辛くなるような、大きな苦難と不幸が待ち構えている。