恋は死なない。
佳音は、まるで砂を噛むように、トーストを口にした。
素直な心のままに愛し合って、二人で迎える初めての朝。本来ならば幸せで満たされているはずなのに、
――今のままじゃ、いけない。
……佳音は切実にそう思った。
黙々と朝食を口に運ぶ佳音に対面して、和寿もその佳音の様子がよそよそしいことに気がつく。
昨夜あんなにも求めてくれて、甘い時間を共有した佳音とはまるで別人のように、和寿の目には映った。
「もう九時になります。これから工房を開けるので……」
朝食の片づけが終わると、佳音が和寿に声をかけて、暗に帰ってくれるように投げかける。
佳音の仕事の邪魔になってもいけないので、和寿もうなずいて、帰らざるを得なくなる。
玄関に向かって背を向けた和寿を見送りながら、佳音は自分の中にある“覚悟”を、どうやって和寿に伝えるべきか考えた。
すると、和寿はくるりと身をひるがえし、振り向きざまに佳音を腕の中に抱きしめた。
ギュッと抱きしめられると、佳音の体の奥に刻み込まれている昨夜の愛撫の感覚が呼び起こされるようだった。甘く切ない感覚に支配されないように、和寿の腕の中で佳音がきつく目をつぶる間にも、和寿は佳音の耳元に囁いた。