恋は死なない。
「いつもみたいに笑って見せて。佳音の天使みたいな笑顔が見たい」
これは、佳音のことを愛しく想う和寿の本心だったのだろう。けれども、佳音は笑うどころか涙が込み上げてきて、首を左右に振ってその腕の中から抜け出した。
「……これから、どうするんですか?このまま、私とこんなことを続けるつもりですか?」
佳音からそう訴えられたのを聞いて、和寿も深刻な面持ちになって立ちすくんだ。
「あなたはこれから幸世さんと結婚して、ずっと幸世さんを裏切り続けるわけにはいかないでしょう?」
和寿が幸世と結婚することは、変えられない現実だ。それも、普通の結婚ではない。会社の将来がかかっている重要な結婚だ。
その現実を改めて突き付けられて、和寿は黙ったまま厳しい顔をして唇を引き結んだ。
「……あのウェディングドレスを見てください。あのドレスは、これまで私が手掛けてきたドレスの中でも、最高傑作だと思います」
佳音にそう言われて、和寿は隣の工房のマネキンに着せられている真っ白なドレスに、改めて目を遣った。そして、男の和寿でも、その美しさに息を呑む。
ほぼ完成しているそのドレスは、初めに幸世が描いたものが、これだけのものとしてよく形作られたと思えるほど、本当に素晴らしい出来栄えだった。