恋は死なない。
「あなたは結婚前の一時の気の迷いで、つい出来心を起こして私を弄んでしまっただけです。そして私は、依頼主の婚約者だろうが見境なく誘惑して、深い関係になってしまう、だらしない女です。世間の人たちから見れば、私たちのしていることは、そういうことなんです」
この佳音の言葉を聞いて、和寿は信じられないような顔をした。じっと佳音を凝視して、佳音の正面へ回り込む。
「僕は、君のことを心から愛している。弄んでなんかない。……君も、僕のことを想ってくれてるから受け入れてくれたんだろう?」
切迫した表情でそう訴えかける和寿は、まるで佳音に懇願しているようだった。
佳音もそんな和寿を見てしまうと、やっぱり非情にはなり切れなかった。
堪えきれず、佳音の目に溜まった涙が、はらはらと零れ落ちた。
「……あなたのことは、心から好きです。……だけど」
佳音は濡れた頬を、手の甲で拭って言葉を続けた。
「何の落ち度もなく、あんなに結婚式を待ち望んでいる幸世さんを、傷つけるわけにはいきません。今だったら、まだ元に戻れます。あなたと私の過ちは、死ぬまで誰にも言わなければ、あなたと幸世さんは何事もなく結婚式を挙げて、幸せな生活が送れるはずです」