恋は死なない。



切々と佳音の語るのを聞いて、和寿はやるせなさそうに眉間にしわを寄せ、唇を震わせた。


「……こんなにも純粋に君を想って、愛し合えたことが、『過ち』なのか?……一体、『幸せ』って何なんだ……」


思わず口を突いて出たような、和寿がつぶやいたことの意味を、佳音も考えた。


立ち尽くす和寿、涙をぬぐい続ける佳音。
二人を取り巻く静寂の外側には、街の喧騒と賑やかなセミの鳴き声が取り巻いて、今日も夏の一日が始まろうとしていた。


息を深く吐き、また深く吸い込んで、和寿が改めて口を開いた。


「……今のままじゃいけないのは、僕も十分分かってる。だから、なんとかしてまた君のところに戻ってくる」


「いいえ……!」


即座に、佳音はうつむいていた顔を上げ、毅然と和寿の言ったことを否定した。

和寿がしようとしている結婚は、これから和寿ひとりの力で、なんとかできるようなものではない。
そして、その結婚のためにウェディングドレスを作っている佳音も、決してそれは受け入れられない。


和寿の真剣な切ない目に見つめられると、佳音の胸に痛みを伴って、和寿への愛しさが募ってくる。
だからこそ、この愛しい和寿のために、佳音は勇気を振り絞らなければならなかった。頬を伝う涙を拭いて、しっかりとした眼差しで和寿を見つめ返す。



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