雨のようなひとだった。

 その時背にした浴室のドアの向こうで音がした。
 振り返ると、シルエットの誰かがいる。彼女しかいない。つーか違っても困る。

「あの、火傷とかしてませんか」

 ……ああ、俺の阿呆な大声に心配して来ちゃったのか。
 嬉しいやら何やら複雑な感情を隠して俺は笑う。

「大丈夫だよ。すみません、ちょっとストレス発散を」
「あっ……えっとごめんなさい、お邪魔しました」

 カタタと控えめにドアを閉める音がする。
 当然、どちらかが風呂に入っている時にもう片方が浴室へ来ることはない。脱衣所なんて洒落たもんはないしトイレは別だけど、それでも洗面台はある。
 だけど絶対に入ってくる事はない。
 それでも来てくれた。勿論、心配してのことだけど。

 ドアの向こうに入浴中の、つまりは全裸の男がいるって程度には意識してくれただろうか。


< 24 / 100 >

この作品をシェア

pagetop