雨のようなひとだった。
ごろんと体勢を変え、天井を仰いだ。
落ちたままの煙草には目を向けない。
手を伸ばしてグーパーと繰り返してみる。
さっきドアを開けていたら待っていたかもしれない展開を想像しないように煩悩を懸命に払った。
意図的に払っている時点でアウトなのもわかってるが、こればかりは仕方ない。俺だって一応男なんだから。
結城の呆れたような顔を思い出す。
焦れたような関係から踏み出せない理由は自分の不誠実さにあるんだと思う。
まだ完全に忘れていない恋愛があるから、今彼女を抱いたところであの顔がちらついてしまうかもしれない自分を許せない。
失敗した恋愛は人を成長させるなんてどっかで聞いたけど、俺は一度も思ったことはなかった。
自慢にもならないが反省だってしたことない。泣かしたこともあるけど、一度もない。
価値観の違いってやつだ、って思っていた。
それなのに「不誠実」なんて言葉を使ってしまうほどには、彼女を大事に想いつつあるんだと思う。