雨のようなひとだった。
「………は」
自然と口が開いて、火の点いていない煙草が落ちる。
ワンテンポ遅れて拾おうと腰を下ろすと、女と同じ目線でいることに気が付いた。
慌てて立ち上がるも、女は構わずにゆったりとした仕草で煙草へ手を伸ばす。
肘あたりで捲られた淡いブルーのワイシャツから伸びる腕は白く、関節の目立つ細い指が俺の煙草を摘みあげた。
俺はその動作がスローモーションのように見える。
少し伏せられた長い睫毛が人工的なものではないことを知っている。
薄い唇は色素が薄いことを気にして、リップクリームさえ色つきを選んでいることも知っている。
向かって左側の頬にだけえくぼができる時は作り笑顔ではない事を――――
「ハイ」
煙草を差し出され、ハッと我に返った。
俺をまっすぐに見ている女からはある種の覚悟さえ感じられる。