雨のようなひとだった。
少し遠慮がちに俺へと手渡されたライターには見覚えがあった。
当たり前だ。
オイルしか買わないことを知っている。
ものを大切にする姿を、俺はいいなと思ったんだ。
数えきれないほど借りた。貰った。
借りる、という感覚すらなくなっていったほどに、自分のものと同じ感覚でいた。
シュッと小さな音がして火が灯る。
ゆらめく小さな小さな灯の向こう側に、俯く女の姿があった。
不思議なくらい落ち着いてその顔を見つめている自分に、正直驚いている。
「サンキュね」
「ううん」
短い会話を交わすと、女も―――女っていうのも冷たい話だな。
わりと短距離走タイプの俺が5年なんて人生の中で一番長く付き合っていた女で、俺が仕事に夢中になりすぎていた結果見事にフラれた相手。