雨のようなひとだった。

 俺から受け取ったライターで自分の煙草に火を点ける仕草さえ、好きで好きで仕方がなかった。
 キスが不味いと不評続きだった俺の愛煙ぶりに、こいつはあっけらかんと言った。

『じゃ、同じ煙草吸えばいいんじゃない?』

 きっかけはそんなもんだった。
 一見女らしい見た目とは違って俺よりよっぽど精神が強く、たくましく、頼りになった。
 仕事も出来るから内心負けるもんかとライバル意識すら持っていた。

(だからまぁ、甘えてたんだろな)

 煙草の煙と共に長く息を吐き出しながら壁にもたれ、俺と同じように煙をくゆらせる女を――元カノを――誰よりも頼りになる同僚を見つめる。

 なまじライバル心を持っていた故に、ふってわいた大きなチャンスに夢中になった。
 電話どころかたったひと言で済むメール連絡すらせず、社内で会ってもろくに話もせず、それで何で『大丈夫』だと思っていたのか。

 甘えと過信がそこにあった。


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