雨のようなひとだった。

「なあ」

 考える前に声が出た。
 驚いて口を塞いでみたけど、もう遅い。

「……何?」
「あ……えーと」

 不自然なほどに視線は彷徨って、どうしても手元へといってしまう。
 彼女と同じ指に光る、真新しいそれに。

「………おめでとうな、千歳」

 逡巡の末情けないほど小さく落とされた俺の声に、同僚―――千歳は目を見開いた。
 笑顔を作ろうとしたのがわかったが、すぐさま口元が歪んで目元には涙が浮かんでいる。慌てて顔を背けて天井を仰ぐと、改めて俺へと向き直った。

「……ありがと」

 俺の前で千歳が涙を見せたのは、これで2度目だ。
 初めては別れを告げられた時だった。
 もう限界だと、『私はそんなに強くなれない』と顔をぐしゃぐしゃにした千歳が頭から離れずにいた。


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