雨のようなひとだった。

*****

「ご機嫌ですね」

 仕事上がりの彼女を迎えに来た今、顔を合わせた瞬間に彼女が言った。
 彼女の前では懸命にクールを装っているつもりなのにいつもこうだ。……同居を言い出した時がアレすぎたのかもしれないが、それでもクールを努めているというのに。

 いつものように少しの距離をあけながら並んで歩き出す。
 いつものように手に触れそうになって―――やめた。

(今日はちょっと無理だ)

 正直千歳のことが頭の半分以上を占めている。
 この状態では彼女の手を握りたくない。
 説明できないけど千歳にもなんかダメだし、彼女にもなんかダメすぎる。

 行き場を失った左手を誤魔化すように後頭部に置きながら会話を続けた。

「わかりますか?機嫌が良いとか」
「……何となく、ですけど」

 微笑みながら返してくれる彼女の声がほんの少しだけ陰った。
 すぐに立て直したが、俺には分かった。


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