雨のようなひとだった。

 彼女の顔は俺の胸あたりにうずまっている。
 その後ろから優しくかかえこむように抱きしめた。
 されるがままになってくれる彼女もまた、俺の背へ回っている手でそっと抱きしめ返してくれる。

 目を伏せて、全てを噛みしめた。

「……変な事言っていいっすか」
「なんです?」
「俺……なんか、こうしてるのすごく落ち着くんです」

 彼女の笑顔を見るだけでときめいて癒されて、もっと近づけたらと思っていたことは否定しない。
 だが、いざ彼女に触れてしまったら……もう充分だと思った。

「部屋に連れ込んで押し倒して……普通やることってひとつでしょ」
「ふ、ふふふ」
「笑うとこじゃないですよ?俺がその気だったらどうしたんですか。普通言わないですよ、“外で着てきた服じゃベッドが汚れちゃいます”だなんて」
「むしろ私がやる気満々だと思いました?」
「ブッ」

 何て事いうんだこの人は。


 
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