雨のようなひとだった。
ひとしきり俺の胸元に頭をグリグリさせた後、ぴたりとやめた彼女は俺の背に回していた手を解いて自分の胸元の前でぎゅうと握りしめた。
一見何かを祈るような仕草に首を傾げると、何かを堪えるような小さな声が聴こえた。
「……知って…ましたよね」
確認するようでいて縋るような声色に俺は勝手に覚悟する。
(来ると思ってた、こんな時が)
気付かず知らないフリをし続けていた事を、彼女だって知っていたはずだ。
あえて確認するこんな時が来るまでは、ずっとずっとフリを続けていくつもりだった。
はー、と小さくため息を漏らして、答える。
「………知ってましたよ。最初から」
喫茶店で初めて見かけた時から。
雨の夜にこの家へ泊めた時から、知っていた。
それでも傍にいたいと思った。