雨のようなひとだった。
「あの、いいです別に俺嘘吐かれてて」
「携帯を片手にとても厳しい顔をしていたのを覚えてます」
「でも切った途端……すごく寂しそうな、切ない顔をしていて」
「だからもういいって」
彼女の話を振り切ろうと俺は背を向ける。
「なんて綺麗な人なんだろうってすごく印象に残っていて」
「もう」
「だから私マスターに名前を聞かれたとき咄嗟に答えたんです、“マキ”って」
「……だから、もういいって………」
聞こうとしない俺の腰にめいっぱい腕を回して話を必死に続けた彼女の告白に――――俺は自分の髪をぐしゃりと握りつぶした。
背中から消え入りそうな声がする。
「………もういいって……それも、気付いてたんですか……?」
「……そこまで自意識過剰なつもりなかったけど、ちょっと、ね」
出来すぎていると思ったんだ。
可愛いなと思った女の子の名前が俺と同じだなんて。