ルルー工房の月曜の午後
少女の言葉に、ベルが視線を走らせると、男の無骨な手が少女の細い手首を掴んでいるのが見えた。
――ほとんど反射だった。
ベルはとっさに走り出した。
肩がけの鞄の口からデッサンが何枚か落ちたけれど、かまわず走る。
まっすぐ、男の背中めがけて。
そして勢いよく、体当たりをした。
ベルの軽い体とはいえ勢いよくぶつかられて、男が倒れこむ。
一緒に倒れそうになる体をなんとか立て直して、ベルは少女を背にかばうように立ちはだかった。
起き上がった男が、ベルを睨みつけた。
「あ? なんだ、坊主」
手首をポキポキと鳴らして威嚇してくる男をまっすぐに見上げて、
「彼女、困ってるじゃないですか。やめてください」
ベルは傲然と言い放つ。
男の顔がいっそう険しくなった。