ルルー工房の月曜の午後
「あぁん? 俺に楯突こうってのか?」
「ちょっと、やめなよ。あんたじゃ敵うわけないよ」
ベルのシャツの袖を引っ張ってそういったのは、ベルの背中に庇われた少女だ。
だが、ベルはかまわず男を睨みつける。
「楯突く? それは、目上の人に反抗することを指す言葉ですね。いつ誰が、僕よりあなたのほうが目上だと決めたのですか? 言葉を学び直すことをお勧めします」
「貴様、言わせておけば――!」
面白いくらいに目を吊り上げた男が、真っ赤な顔をさらに赤くして、怒りもあらわに腕を振り上げた。
殴られる。
ベルは少女を巻き込まないように、とっさに後手で突き飛ばすと、ぎゅっと目を閉じ、歯をくいしばる。
――だが。
待てども来るべき衝撃が襲ってこない。
不審に思って目を開けると、視界が真っ黒になっていた。