恋の指導は業務のあとに
「ひゃっ、その“奥”じゃないです~!部屋の奥です!羽生さんのエッチ!エロ魔神!」
息も絶え絶えになっている若葉を解放してやり、玄関での攻防に終止符を打つ。
「羽生さんは座っててください」
一体何が始まるんだ?と、考えつつコートを脱いでネクタイを緩めて座っていると、キッチンのほうからいい匂いがしてきた。
「今日は頑張って煮物を作ったんです。どうぞ!」
肉じゃがに焼き魚に味噌汁とご飯、和食がテーブルに並べられた。
『料亭の家の娘なのに、料理が苦手なんです』
付き合い始めのころにシュンとしてそう言っていた若葉だが、随分練習したのだろう。
料亭並みの盛り付けで、見た目も味もいい。
普段作るものも普通においしいが、和食は一度も並べられたことがなかった。
料亭の娘だからこそ、色々とこだわりがあるのかもしれない。
「うまい。いい味だな」
「よかったあ、嬉しい。あ、それでね、デザートもあるんです」
そう言ってキッチンから持ってきたものを見て、ハッと気付く。
そうか、今日は俺の・・・。
「お誕生日、おめでとうございまーす。さ、火を消してください」
直径10センチほどの小さなケーキに、大きめのろうそくが3本と小さなろうそくが1本のっている。
そう、今日は俺の31歳の誕生日だ。
すっかり忘れていたが。
火を吹き消し、一緒に食べたケーキは甘さ控えめのもので若葉の気遣いが感じられた。
「それでね、もうひとつ。これ、どうぞ・・・気に入ってもらえるといいんですけど」