恋の指導は業務のあとに
「ありがとう」
遠慮がちに差し出された白いリボン付きのものを受け取り、緑色の包み紙を開くと、小さな箱の中にはネクタイピンが入っていた。
「大人の男の人にプレゼントなんて、何がいいのかわからなくて、ずっと迷っていたんです。それで」
「清水に、アドバイスしてもらったのか?」
「はい。内緒で準備していたから、言えなかったんです。ごめんなさい!」
自分の買える範囲のもので、身に着けてもらえるものをと一生懸命探したらしい。
買い物には、清水と同期の子が付き合ってくれたとも話す。
若葉は人を巻き込むのが上手だ。
「・・・大切にする」
腕を引いて体を引き寄せて抱き締めると、脱力して身を預けてくる。
上を向かせてキスをしながらベッドまで連れていき、たっぷりと時間をかけて若葉を抱く。
この華奢な体に初めて触れたとき、その軽さと柔らかさに胸がざわついたのを覚えている。
その時は、久々に女に触れたからだろうと自分を納得させたが、そうはいかなかった。
子供に好かれる優しいところ。
俺の要求に一生懸命に応えるところ。
素直で屈託なく笑うところ。
何より、熱を出した俺を看病してくれたあの時、“愛しい”と感じた。
部下に恋をしないように築いていた最後の砦が、あの時一瞬で崩れたわけだ。
弱いところは、俺が守ってやらねばと強く思う。
腕の中で寝息を立てる若葉の頬にそっとくちづける。
「この無防備な寝顔は、他の男には見せるな」
俺だけにしておけ、と耳元で呟いたら、若葉は少し身じろぎをした。
若葉はよく気にしているが、子どもだと思ったことは一度もない。
思おうとしたことはあるが・・・。
“年上男にモテる”
そんな自分の魅力に気付いていない彼女に、俺はこれからも指導をしていくのだろう。
仕事ではなく、恋の、指導を。


