恋の指導は業務のあとに

「あなたたちが池垣さんと辻田くん?私は開発課主任の平井です。辻田くんの上司です。今日は営業課主任が出掛けていますので、私が代わりに池垣さんを迎えに来ました。どうぞよろしく」


眼鏡をくいっと上げて話す平井さんはすごく理知的な感じで、いかにも仕事ができそうだ。

話し方もハキハキと淀みが無くて、こういう人が上に立つ人なんだなと思う。


「商品部は三つの課があります。開発課と営業課と管理課。開発は商品の企画開発、営業課は商品の販売促進、管理課は生産と品質の管理をします。開発課が売れる商品を作り、営業課がそれを販売するルートを作る。二人の仕事はこの会社の柱となるものです。これからしっかり頑張っていきましょう」

「はい!」

「頑張ります!」


平井さんは商品部と書かれたプレートが貼られた戸の前に立つと、にこっと笑った。


「さ、ここが私たちの職場です。商品部が一つの部屋の中にありますので、互いにコミュニケーションを取り易くなっていますよ」


職員室みたい。

ぱっと見た印象がそうだった。

向かい合って並べられた机の上にノートパソコンがあって、本やファイルなんかが沢山置かれている。

雑然としているけれど、電話の音と話し声ですごく活気がある感じだ。


「営業課はみんな出払っているから、挨拶は明日の朝になるわね」


平井さんが指したデスクの島は誰も座っていなくて、ここだけぽっかり空いてて寂しい感じだ。

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