恋の指導は業務のあとに
積み木はバランスをとる力と創造力が育つのだろうか。
あと、集中と緊張の後にバーンと壊す解放が情緒を育てるとか?
そんなことを思いながら積んでは壊しを繰り返して感じたことをメモして、次の玩具に移った。
今度のは、透明な筒の中にらせん状のスロープがあって、球を上の穴から入れるとコロコロ下まで転がって、最後にチリリーンと音が鳴るものだ。
これで遊んでどんな部分が育つのだろう?と真面目に考える。
小さな椅子に座って、これまた小さなテーブルの上に玩具を乗せてくるくる回って落ちる球を真剣に見ていると、ドアが開いた気配がした。
振り返ると羽生さんがいて、気にせず続けろと言ったので再び玉を入れてコロコロチリリーンとやる。
すると、クスと笑ったような声がした。
「垣根、全く違和感ねえな」
「それ、どういう意味ですか。それに、垣根じゃありません!池垣です!」
私の抗議の声を華麗に無視して、羽生さんはテーブルの上にある玩具を指差した。
「それ、結構夢中になるだろう」
「え?あ、はい。ころころ転がる球を見てると無心になります。すごく単純なんですけど、何度もやりたくなるっていうか」
「上々だ。俺は外に出てそのまま直帰する。レポートは必ず書いて俺のデスクに置いておけ」
そう言い置いて出ていきそうな羽生さんを咄嗟に呼びとめる。
「なんだ。質問か?」
「いえ、マンションのカウンターの上にメモ置いたんですけど、気付きましたか」
「勤務中は、業務に関係ないことは言うな」