恋の指導は業務のあとに

羽生さんはそのまま何も言わずに行ってしまった。

勤務中に言った私もいけないけれど、一言“見た”か“見てない”で済むことなのに、結構お堅い性格みたいだ。


その後私は羽生さんに言われた通りに知育玩具で全力で遊んで、それぞれの良い点と気付いた点をレポートにまとめた。


「お疲れさまです。お先に失礼します」


なんかすごく疲れた。

幼い子が遊ぶ知育玩具でも、一日中真面目に遊ぶと意外に体力が要るのだと分かった。

エントランスまで下りていくと、琴美が廊下を歩いてくるのが見えた。


「琴美!」


呼び掛けると笑顔になり、巻き毛をふわふわ揺らして駆け寄ってきた。

なんて綺麗なんだろう。


「ね、若葉は今日暇?一緒にご飯食べにいかない?」

「いいよ。でも私引っ越してきたばかりだから、琴美オススメの店にしてね」

「分かった。安くて美味しいとこに連れてってあげる!」


任して!と笑う琴美と一緒に来たのは、押し花の額がたくさん飾られた可愛い洋食レストランだ。

メニューにもナプキンスタンドにも、そこかしこに押し花があしらってあり、花好きな私としてはテンションが上がる。

メニューを開いて何を食べようか悩んでいると、琴美がハンバーグがオススメだよと言う。

それならと、私はハンバーグのセットを頼み、琴美はクリームコロッケのセットを頼んだ。


お互いに今日一日何をしていたか話しながら食べる。

琴美は一日中礼儀と言葉遣いの練習をしていたそうで、好感度たっぷりのメイクの仕方まで教わったのだそう。
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