恋の指導は業務のあとに

㈱TUJIMOTOのロゴが入れられた白い営業車で来たのは、大きなショッピングモールだ。


「ここは二年前に出来たばかりの複合商業施設だ。独立した店舗よりも集客力があり、売り上げも多い」


駐車場で車がいったん止まって、羽生さんの手が不意にこちらに伸びて来て、私が座っている助手席の背にパシッと置かれて胸がドクンと跳ねる。

運転席から体を乗り出して二人の席の間から後ろを見ているので、とても顔が近い。

車を停めるだけだと分かっているけれど、昨夜の出来事がフラッシュバックしてしまって鼓動が加速する。

背もたれ越しに羽生さんの腕の圧力を感じてしまって、なんだか椅子ごと抱かれているような気になる。


これが女子の間で噂の助手席マジックだ。

意識したらだめなんだ。


そう思うけれど、顔に熱が集まるのを感じる。

こんなふうに男子の隣に乗るのが初めての私には、片手でハンドル操作するのがなんとも男らしくてかっこよく見えてしまう。

車は切り返しすることなく、一度でスーッと入った。

羽生さん、運転が上手なんだ・・・。


2階の隅にあるおもちゃ屋さんには、平日の午前中にも関わらずお客さんがたくさんいた。


「こんにちは。TUJIMOTOです。店長はいらっしゃいますか」


羽生さんが手近にいた店員さんに声を掛けると、少々お待ちくださいと言ってスタッフオンリーの札のかかった戸の中に入っていった。

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