恋の指導は業務のあとに

間もなくして、サンバイザーを被った眼鏡男子が出てきた。

サンバイザーはこのおもちゃ屋さんの制服の一部らしく、店員さんはみんな被っている。


「羽生さんお久しぶりです!」

「こんにちは。今日はうちの新人を連れてきました」

「おお~フレッシュですね。僕は店長の田中です。よろしくー」

「池垣若葉です。宜しくお願い致します」


まだ名刺が無いので口頭で挨拶をすると、田中さんはイケガキ?と言って首を傾げた。


「新緑みたいな素敵なお名前ですね。今の季節にピッタリだ」

「ありがとうございます」


目じりにしわを寄せてくしゃあっと笑う田中さんは40歳くらいに見える。

羽生さんは田中さんに最近の売れ筋の傾向とかを訊ねているので、私は慌ててメモをとる。

田中さんは、春は新入進学の時期なのでお祝いとして購入されたお客様が多いけれど、例年これからの季節は売り上げが落ちるので、どう売り場展開をしていくか店の方としても考えていると話す。

中でも知育玩具は安定した売上げがあるけれど、主に祖父母や親せきが誕生祝いなどに購入することが多く、節句とかの季節イベントにも左右されやすいとも言う。

羽生さんは、時期を問わずに売れる商品展開を検討しますと言って話を終えた。


「それでは売り場を見させて頂きます」


店長さんに頭を下げる羽生さんに倣って、知育玩具のコーナーに向かう。

売り場は、ゲームソフト、ジグソーパズル、プラモデルの売り場を通り過ぎたところにあった。

店全体のレイアウトとしては、真ん中の奥辺りに位置している感じだ。

隣には三輪車や手押し車の売り場があって、小さなジャングルジムやブランコなんかもある。

おじいちゃんやおばあちゃんがプレゼントを選びやすいレイアウトだと思えた。

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