恋の指導は業務のあとに

子どもたちに囲まれて次々に話しかけられて、泣いていた男の子からも離れることができずに困っていると、男の子のママらしき人がすみませーんと言って中に入ってきた。

上の子のトイレが長引いちゃってーご迷惑かけましたーと言って、男の子を抱き上げた。

ママにぴたーとくっつく男の子を見てホッとする。

それをきっかけにしてプレイスペースから脱出すると、腕を組んで見ていた羽生さんは口角を上げた。


「お疲れ。なつかれていたな」

「はい。何故だか子どもたちにはモテるんです」


そう言うと羽生さんはふうんと鼻を鳴らして、私をじっと見た。

その表情は笑ってない。

何を思っているのだろうか。


「次はメンテをする」


羽生さんは、おもむろに黒い鞄の中からモップを取って私に差し出す。

自社製品がどれか分かるか?と言われて売り場を見れば、当然ながらにあちこちに点在しているし、似たようなものがたくさんある。

どこのメーカーも発想するところは一緒で、多分、売れ筋も同様なのだろう。

この中で売上げを維持していくのは、かなりの営業努力が必要なのかもしれないと思えた。

他社と販売価格を比べて見ながら、自社商品のホコリを取って整頓して売り場を離れた。

そのあと3か所を周って会社に戻り、営業報告という名の書類を書いて提出した。

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