恋の指導は業務のあとに

でも清水さんってムードメーカーというか、私にとっては癒し系だ。

耳に残る牧田さんの甘ったるい声をスパッと打ち消してくれた。


「じゃあ、三つ刺さってるし、一つだけ食べますか?」

「いいんですか?」

「はい、どうぞ」


串焼きを満面笑顔の清水さんに差し出そうとすると、羽生さんに遮られた。

清水のはこれだから食え、と自分の分を渡してしまう。

私のを1個食べますか?と言ってみるけれど、要らないと手を振った。

もしかして、最初から清水さんにあげるつもりで買ったのだろうか。

ありがたく食べた和牛の串焼きは、柔らかくてジューシーで頬がとろけて落ちそうなくらいに美味しかった。


その後高速道路を走り続けるバスの中、眠ってしまいそうな羽生さんに一生懸命話しかけて、たくさんしゃべってもらった。

話題は、今までの社員旅行について。


「バスはこのままここに停まっていますので、時間になったらお戻りくださーい」


ガイドさんの案内と幹事からの「神戸市からは出ないでください」などの注意事項連絡が終わり、スマホをいじったりガイドブック見たりしながら、みんながあちらこちらにバラけていく。

琴美を探していると清水さんが話しかけてきた。


「池垣さんはどこに行くんですか?もしかして主任と一緒に?」

「やだあ、違いますよ。私は琴美と約束してるんです」

「琴美、さん?」

「同期の子なんです。あ、来た来た。琴美!」


人並みの間をきょろきょろしてる琴美に手を振って合図する。

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