恋の指導は業務のあとに
「ああ、受付にいる子だ。俺、清水です。池垣さんと同じ営業課にいます。二人だけで神戸を回るんですか?」
そうですと返事をすると、良かったら俺と一緒にどうっすか?と清水さんは照れ顔で言う。
その肩を、羽生さんの手がガシッとつかんだ。
「清水は、俺と一緒だ。行くぞ」
清水さんはずるずると引きずられるように連れていかれてしまう。
その様子がおかしくて、琴美と顔を見合わせて笑った。
「じゃ、若葉、行こうか」
神戸でのフリータイムは、事前に琴美と相談して行くところを決めてあるのだ。
神戸といえば、そう、異人館だ。
「どこから行く?」
チケット売り場ではコースが数種類あって、各々違う料金が設定されている。
個別でも見られるけれど、まとめて買った方がお得みたいだ。
一番たくさん見られる9館特選入館券を買う。
『うろこの家』ではアンティークなインテリアとコペンハーゲンの食器やティファニーのガラス工芸品の素敵さに溜め息をつき、『ベンの家』ではオオカミの剥製の大きさに驚いた。
オオカミ、人が乗れそうなデカさだった。
犬くらいだと思っていたのが覆されて、ひたすら驚いた。
異人館の外観と中を楽しんでおみやげ屋さんをまわり、美味しいケーキを食べたらあっという間に楽しいフリータイムが終わった。
バスのある駐車場まで戻ってくると、羽生さんが見知らぬ女子社員と話をしているのが見えた。
女子社員は後ろ姿しか見えないけれど、ストレートの髪が肩甲骨のあたりまであって、なんだかとっても綺麗そうな感じだ。