恋の指導は業務のあとに

二人向かい合っていて、羽生さんは、私が今まで見たこともないような優しい表情をしている。

あんな顔もするのだ。

あの人は誰だろう・・・もしかして、彼女?


琴美と別れてバスに向かう途中、清水さんを見つけたので捕まえて訊いてみた。


「羽生さんと一緒にいる人誰だかわかりますか?」

「あ、あれは柳田さんじゃないっすか?広報課にいる人で、確か羽生さんの元カノっすよ。仲がいいっすね。あれは、ヨリ戻しそうっすねー」


そうか。元カノ、なんだ。

羽生さんには彼女がいると思っていたけれど、今はいない?

それとももうとっくにヨリを戻してて、小説を買ってくれたのが柳田さんだったりして・・・。


バスの中、隣で長い脚を組む羽生さんを盗み見る。

長い指を持つ大きな手、大人カジュアルな服、背が高くて整った顔立ちはモデルみたいで、これぞ大人のイイ男って感じだ。

こんな人の隣に立つのは、やっぱり大人の女が似合う。


「そっか、そうだよね・・・」

「なんだ?」


思わず声に出してしまっていて、焦りつつ話題を探す。


「あ、その、羽生さんは、神戸観光はどこに行ったのかなーなんて、思って」

「カワサキワールドだ。電車やバイクが展示してあるところだ。乗り物好きの清水に付き合ってきた。カキネはどこに行ってきた?」

「異人館です。すっごく良かった。あんなところに住んでみたいです!」

「そうか、カキネらしいな」


珍しくもふわっと優しく微笑むからドキッとする。

柳田さんと話ができたから気分がいいのかもしれない。

そうか、あの人は羽生さんのこんな表情を引き出すのだ。

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