恋の指導は業務のあとに
「お疲れ様ですー。どうぞゆっくりお寛ぎください」
バスは宿泊する大きな温泉旅館に着き、割り振られた部屋に荷物を置く。
私は管理課の女子と同じ部屋になっていて、みんな食事前に温泉に入りに行くというのでご一緒させてもらう。
大浴場にはほとんどの女子社員が来ているみたいで、脱衣所はかなり混んでいた。
水音と桶を置くカポンと鳴る音が響く中、メイクを落として湯に浸かっていると、湯けむりの中を浴槽まで歩いてくる牧田さんを見つけた。
タオルで前を隠しもせずに、惜しげなく裸体を晒している。
ダイエットなんて必要無さそうな立派なプロポーションで、羨ましいくらいだ。
あれなら、羽生さんに水着姿を見せたくてたまらないだろうと思える。
サービスエリアで見た女子たちと一緒に話ながらチャプンと湯を揺らして、窓際にいる私の近くまで来たので咄嗟に背を向けた。
「私、今夜こそ、彼を落としてみせるわ。こんなチャンス滅多にないもの」
「うわあ、自信たっぷりじゃない」
「もちろんよぉ。作戦考えてあるもの、バッチリって感じ」
作戦という言葉が耳に入って、思わず聞き耳を立てる。
けれど、牧田さんは「内緒~」と言って笑うだけで何も話さなかった。
彼女が狙っているのはただ一人、羽生さんだ。
あの人をどうやって攻略するのだろう。
綺麗な牧田さんでも、元カノの柳田さんには勝てそうもないけれど。
見つからないように静かに風呂からあがって脱衣場で体を拭く。
早くここからでなくちゃ。
急いで拭いていると、牧田さんが来て隣で体をふき始めたのでギョッとした。
あろうことか隣の棚を使っていたのだ。
またまた咄嗟に背を向けて息を殺す。
私だとバレていないといいけれど。できれば関わりたくないのだ。