恋の指導は業務のあとに
「あらぁ?あなた誰かと思えば、池垣さんじゃない?」
そう声をかけられたのは、カゴから浴衣を取るために正面を向いた瞬間のことだった。
「はい、お疲れさまです」
「あらあ、まあ、いやだわ。前から幼い顔立ちだと思っていたけどぉ。あなた、スタイルまでもオコサマなのね~。まるで中学生みたいだわ」
上から下まで私をじろじろ眺めたあと、誇らしげに胸をはって、バサッとバスタオルを取った。
ふふんと見下すような笑顔を私に見せる、その見事な凹凸のあるスタイルは先ほど浴槽の中からたっぷり拝見いたしましたが・・・。
「ん~でも、それじゃ、オトコなんてできないわね、お気の毒だわ~。どう見たって、大人のオトコには対象外だもの。あ、年下ならいいかも~。今度私の知り合い紹介しましょうか?高校生だけど、お似合いだと思うわ~」
素早く浴衣を着て服その他を袋に詰め込み、「お先に」と声をかけ、クスクスと笑う牧田さんとその取り巻きから逃げ出す。
いつも自覚はしているけれど、今のは正直へこんだ。
だから羽生さんは裸を見ても平気だったのだと、改めて突き付けられた気がした。
どうしたら、私にも大人の魅力がつくのだろうか。
夕食の時間になり、管理課の子と一緒に宴会場へ向かう。
ずらりと並ぶお膳と座布団を見て、人数の多さを感じる。
多分この温泉旅館は、うちの貸し切り状態だろう。
席に迷っていると、「カキネはここだ」と浴衣姿が眩しい羽生さんの隣に座らされ、カンパイの合図で食事が始まった。