恋の指導は業務のあとに

前の舞台では見知らぬ歌手のショーがあり社員の一芸披露もあり、宴もたけなわになったころ、羽生さんの隣には牧田さんが陣取っていた。

彼女は浴衣の襟元や裾を乱して見せて、一緒にお酒を飲みながら甘えた声を出して、お色気攻撃をしている。

赤く染まった頬にトロンとした目、浴衣からのぞく白い肌は、女の私から見てもすごくセクシーに見える。

作戦って、これなのだろうか。


「営業課の池垣さんですよね?飲んでますか!」


ばばばっと3人の男子社員が私の前に来て、ビール瓶を差し出していた。


「いえ、飲めませんので、すいません」

「まあそういわずに、お酌だけでも受けてくださいよー。俺、池垣さんとお近づきになりたいんですよー」

「俺もっす」


真っ赤な顔してへらへら笑う男子社員は、お膳に伏せてあるコップを無理矢理私に持たせた。

どう断っていいものかと困っていると、隣から伸びてきた手が私の手からコップを奪った。


「コイツには、飲ませないようにお願いします。俺が酌を受けますよ」


え~、羽生さんの見張り?キツイなあと言って注がれたビールを、羽生さんは一気に飲んだ。

男子社員たちは私が飲まないので興味を削がれたのか、すぐに違う女子社員のほうへお酌に行った。


「ありがとうございます」

「部下を助けるのは上司の務めだ」


時間がたつにつれて宴会場から出ていく人が目立ち、出ていった分だけ戻ってこないので会場の中はスカスカになってきた。

牧田さんはすっかり酔っぱらっているようで、羽生さんに抱きついて目をつむっている。

これじゃ、作戦は失敗したみたい?

それともこれから??

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