恋の指導は業務のあとに

「デュエットしましょう!」


清水さんを誘って二人して曲を選んでいると、羽生さんが来て私の前に立った。

牧田さんは、いない。

あのあと部屋に送り届けたのだろうか。

そのあと、したの?

部屋にはほかの女子もいるはずだし、そんなことしてない?


彼がずっとそこに立っているので、隣にいた管理課の女子が気を利かせて間を空けた。

もちろん、そこにすとんと座って脚を組む。


どうしていつも隣に座るのだろう。

指導中の部下だから?

私がオコサマだから気になるの?


モヤモヤイライラする心を落ち着けようと、手近にあった自分のジュースをぐっと飲む。

するとお酒の味がして、ケホケホとむせた。

それは今まで隣にいた子のもので、青りんごのチューハイだった。

間違えたのだ。どうしよう、クラッとして熱い。


「あの、ちょっと、トイレに行ってきます」


カラオケの部屋から抜け出してトイレに向かう。

今までチューハイは何度も飲んだことがある。

でもそれは一杯をチビチビと飲むくらいだ。

一気に飲んだせいか、前に比べて、アルコールのまわりが早い気がする。

トイレにたどり着く前に力尽きてしゃがみこんだ。

うー、気分悪い。


「ったく、今日は酔っぱらいの世話ばかりだな。立てるか」


くらくらして声も出せないでいると、ふわっと体が浮いた。


「ここが旅館じゃなかったら、あんたは、うちに持ち帰るところだ。確か、552号室だったな?」

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