性悪女子のツミとバツ

あまりの愛おしさに涙が出た。
今まで彼にしてもらってきたことの大きさに、改めて気づく。
それと同時に、彼がずっと抱いてきたであろう気持ちを、私は初めて理解したのだ。

愛おしい人が、目の前で無防備に寝ている。

思わず抱きしめて、優しく髪を梳く。
それ以外の行動は、まるで思いつかなかった。


翌朝二人ほぼ同時に目覚めると、彼はすぐに頭を抱えた。
二日酔いの頭痛以上に、彼にダメージを与えたのは、廊下に脱ぎ散らかされた二人分の衣服と私の身体に残された無数の赤い痕だった。

「えーっと、昨日のこと覚えてる?」
「残念ながら、何をしたかの記憶はある。」

申し訳なさそうな彼の顔を見て、何でもないことのように問いかければ、彼はらしくもなく項垂れて、ため息をついた。

「萌、悪かった…その…」
「何についての謝罪?私、別に怒ってないわよ。」
「いや、結構荒っぽく抱いた記憶があるし…」
「たまにはいいわよ、少しくらい。」
「それに、俺、昨日、つけてない…よな?」

記憶を辿るようにぽつりぽつりと確認する彼は、おそらく自己嫌悪でかなり凹んでいる最中なのだろう。
その姿は昨日甘えてきた彼と同様に、私の中の庇護欲を掻き立てる。
お互いに弱さを見せ合って、慰め合える関係になった。
そのことに、私はとても満たされていた。
きっと、この充実感は、彼に一方的に甘やかされているだけでは、得られなかっただろう。

「だから、全部含めて、私は怒ってないって言ってるの。」

まるで捨てられた子犬のような不安げな瞳で、こちらを窺っている彼に、私は心からの言葉を掛ける。
堂々と言い切った私に彼は目を見開いた後、ふっと小さな笑いを一つ漏らした。

「萌、ありがとう。」

謝罪ではなく、感謝を告げた彼は、もういつも通りの明るく自信たっぷりの顔に戻っていた。
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