性悪女子のツミとバツ


「えー、田村君はとても仕事が早い、私の部下にしておくには勿体ないくらい非常に出来のいい部下でして。今回もその素早い仕事の賜でしょうか。結婚はまだ先と思っていた萌さんに対して、力業で結婚に持ち込んだと聞いております。」

浜野部長のスピーチに、招待客の笑いがドッと沸いた。

「一方、萌さんも新入社員の頃には営業部に配属され、ともに仕事をした仲です。あの、当時の彼女は、若くて危なっかしくて、時折自分の人生に悩んでいるようにも見えました。でも、今の部署に移り、支社長の秘書として勤めている姿を見ると、すっかり立派な大人の女性に成長したのだなあと…ほんとうに、うっ、うれしく…おもって…ああ、だから、田村、スピーチは俺じゃなくて佐藤に頼めって言っただろぉ…」
「ほら-、部長、しっかりしてくださーい。」
「部長、自分の娘じゃないんだから、泣かないでくださいよ。」
「部長、最後まで頑張ってー!」

感極まった部長のスピーチは、途中から涙混じりになり、最後は部下や招待客たちから声援が飛んだ。
切れ者で通っている浜野部長も、部下には愛情深いことで有名だ。もちろん、私も人一倍迷惑を掛けたくせに、ちゃっかり可愛がってもらった一人だ。
部長はあんな風に言っていたけど、やはりスピーチは部長に頼んで正解だったと思う。

安定期に入ってから、何度目かの大安吉日。
穏やかな気候の日に、私たちは予てから予定していた通り、結婚式を挙げた。
出産後落ち着いてから、生まれてきた子どもと一緒に、こじんまりとした式が挙げられたらいいなと思っていた私達を、「こういうことはきちんとやっておきなさい」と説得してくれたのは彼のご両親だった。

人気のある今時の式場やレストランはすでに予約いっぱいで、決めたのはどちらかと言えば昔ながらのスタンダードな式場だ。
さすがに仲人は立てていないが、それでも今時珍しい、結婚式らしい結婚式になった。
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